炭の効用 温故知新   今 昭宏 

私の治療室には、いま時めずらしい昔ながらの「火鉢」が置いてある。 四角いケヤキ製で、ヘリのついた素敵な火鉢だ。

開業するとき、師匠の橋本敬三先生のマネをして使いはじめたら、やめられなくなってしまった。 師匠は「なんとなく気持ちがいいんだ」と夏でも火鉢に炭を入れ、鉄ビンをのせて楽しんでいた。 確かに炭火で湧かしたお湯でお茶を入れると、まろやかな味になってうまいし、炭火焼○○○なども、なぜかイイ感じの味になる。

炭の熱エネルギーは物理的には、遠赤外線がたくさんでるからいいという。 また、炭を部屋に置いておくだけで、空気中にマイナスイオンが多くなるからいいともいわれる。

難しい原理は私にはよくわからないが、そのよくわからないところを直感的に感じ分ける能力のことを師は原始感覚と言っていた。 原始感覚は、つきつめると快か不快に分類され、味でいえば、うまいかまずいかを感じ分ける能力。 環境では、ここちよいところとイヤなところを識別する直感力ともいえる。 もちろん、快(気持ちがいい)方向がイイに決まっているのだが、気持ちよさにもいろいろあるわけで、その時だけでなく後味のよさがポイントになる。

キーワードは 「何となく気持ちがいい」 これだ。

原始感覚の詳細は別の機会に、、、。

昨今いろいろなところで炭が活躍しはじめている。 例えば、浄水器の中、炊飯器の中、ポットの中、枕の中、家の隅、お風呂の中、床の下、土の中、などなど、、、。 昔から炭は燃料としてだけでなく、水や空気をきれいにし、土の中に埋めればその土地の電位を高くするものとして農業や神社仏閣などの建築分野でも愛用されていたのだ。

昔の直感力のスルドイ人は、そこにいるだけで心地よく元気になれる場所(イヤシロチ)がわかり、そこに神社などを建てたのだ。 そこは景観がよく風通しも良く、でっかい植物が育っている。そういうところが、イヤシロチだ。 反面、そうでもないところには、穴を掘って炭の粉を埋めて高電位の土地にした。

ちなみに、カタカムナという昔の物理では、直径と深さ1メートルの穴に、そこから30センチ粉炭を入れ、土で埋める。 これで、その周囲の半径15メートル以内がイヤシロチになるという。 大昔、今よりすぐれた文明の時代があって、いたるところで炭を利用し、炭を祭り、炭を神の化身として崇拝する調和のとれた平和な文化が栄えていたのかも知れない。、、、。 やれやれ。

炭を科学的にみると、主成分は炭素Cでダイヤモンドと同じ元素からできている。 見た目はまったく違うように見えるが、分子の配列が少し異なるだけで、炭はダイヤモンドと兄弟そのものだったのだ。 さて、私自身は、炭を製造したことはないのでエラそうなことは言えないが、造っている人の話によると、炭は木を炭窯に入れて蒸し焼きにし、炭化させて造られるのだが、釜を密閉してできるのが、黒炭で釜に少しずつ空気を入れて1000度前後まで温度を上げ、真っ赤になった炭を外に出して素灰としう消し粉をかけて消してできるのが白炭だ。

黒炭の特徴は、けっこう安値で、柔らかく、着火しやすいが、少々ガスがでるので、外でのバーベキューなどに適している。 空気の調湿、脱臭はこれでいい。

白炭は、ちょいと高値で、硬くて着火しにくいが、ガスがほとんどでなくて長持ちするので、家の中で火鉢や掘りごたつに使う。 水に入れて一晩おけばおいしい水になる(水1リットルに炭50グラム位)。 風呂に入れれば、お湯がやわらかく汚れにくくなり、素肌ツルツルで湯冷めなしだ。 (網の袋に炭1キログラム位入れる)あまりたくさん入れると、自分の入る所がなくなるので、注意すること。 炊飯器に1本(50〜100グラム程度)入れてお米と一緒に炊けば、おいしいご飯がホカホカできあがる。

白でも黒でも冷蔵庫や車そして、部屋におけば脱臭効果バツグン。 たんすや押入れチョロッと入れておけば除湿効果もある。このようにして使った炭は、ときどき水洗いして天日乾燥してまた使う。 使用期間の目安は半年くらい。 お世話になった炭は、細かく砕いて植木や田畑の土にまいておけば、土壌改良になる。 炭や灰はアルカリ性だから、酸性の強い日本の土壌をバランスよくしてくれる。

灰で調度品を磨けば、ピカピカになる。 灰のことをアクともいうが、植物の渋みなどを取ることをアク抜き(灰汁抜き)といって、昔のアク抜きは水に灰を入れてやっていたのだ。 アク(灰)をもってアク(悪)を制すなのだ。 漢方薬の原理と同じだ。

話が脱線してしまいそうだが、昔の漢方薬というのは煎じ薬のことで、有名なものにドクダミがある。 生の葉をもんで皮膚のおできにつけたり、鼻の穴に入れて蓄膿を鼻水にして出して治したりした。 ドクダミのドク(毒)が体内に滞っドクを導き、ウンコやおしっこや汗と一緒に体外に出してくれるのだ。 ドクを飲むというと、ドクが体内の入ってしまうと思ってしまうが、口から肛門までの消化管の内壁は外界と接する体外なのだから心配ない。正常な内臓機能であれば、そのへんのことはちゃーんとうまいことできていて、必要なものを血中に取り込み、不要なものは、外へ捨てるようになっている。 ちゃーんとありがたくできているのだ。 しかし、内臓の働きが弱っていたり、食べ過ぎたりしていると、ドクがたまりすぎて捨てきれなくなる。 そんなとき、そのいらないドクを外に引き出す手助けをしてくれるのが、ドクダミのドクなのだ。 だから、安心してドクを飲んでいいのだ。

やっぱり話が脱線してしまったが、簡単に言ってしまえば、ドクをもってドクを制す漢方の薬理とは、こういうことだったのだ。

さて、炭の一般的な材料には、ナラやクヌギや竹などが使われ、有名なのがウバメガシの備長炭だ。 この炭は、しっかり高値でずっしりと重く、切り口をみると、ピカピカと光輝く花のように見えてしまうから不思議だ。 恋人へのプレゼントはダイヤモンドと決めているアナタ、炭の方が安くていいかもよ。

これからの時代は、汚してしまったからだとこころと地球をきれいにする観点からも、この炭という素晴らしい古来の知恵をもっともっと有効に活用するべきだと想うのは私だけだろうか(アナタもそう想うことはわかっている)。 原始感覚のスルドイ人は、もうすでに炭を生活に取り入れている。 なんとなくその良さがわかってしまうのだ。

そういえば先日、火鉢が大好きな私の友人が遊びにきて、鉄ビンのサビをとんでもない方法で、きれいに磨いて取ってくれた。 なにをかくそう炭にチョイと水をつけてゴシゴシとやるのだ。 これにはさすがの私もびっくりした。 びっくりついでに、真っ黒になった友人の手を洗い流したら、なぜがツルツルにきれいになってしまったのだ。

そのうち、炭の粉の入った化粧品や食品なんかブームを呼び起こす時代がくる。 いやもうすでに現実にきている。 炭うどん、炭こんにゃく、炭あめなどができていて、とてもうまいと評判だ。 平成12年1月7日朝、NHKで放送していた。 きっといつか、女性がバックに炭を入れて歩くのが、流行ファションになるぞ。 、、、なるわけないか。 なればいいのに、、、。

とういことで今度は火鉢のこと。 テレビの時代劇、水戸黄門や遠山の金さんをついその気になって喜んで見ている私のような人は、必ず出てくるから知っているこの火鉢。 瀬戸もの、木製、銅製などがある。火鉢の中に灰を入れ、その中に炭に火をつけておき、部屋の暖房、手あぶりなどに使うただの道具だ。 (ただでは買えないのだ)しかし、このただの道具が計り知れない力と利便性に富んでいることに気づく人はまだまだ少ない。

ここから、その辺のことについてなんとなく書いてみたい。 私が火鉢と出会い、おつきあいが始まって20年程になる。 朝一番に、火鉢に炭を入れるのが日課だ。 火鉢で上手に炭をおこせるようになるには、それなりの経験と炭との呼吸、そして、微妙なカンが要求される。 (たいしたことはないのだが、大げさに表現してしまう私)

まず、火おこしといって、穴だらけの片手ナベのような物の中に炭を5〜6個いれて、ガスコンロで火をつけてから、火鉢に入れる。 火の着いた方を上にして、バランス良く中央を空けて炭同士が仲よく手をつないでいる姿に置く。 はじめアクはかけない。 しっかり火が着いて炭たちの中心の空間が赤くなってから、適当にアクで周囲を覆う。 うまくゆけば、これでよし。

お湯を沸かしたければ、ゴトクをおいて、水と炭を1本入れた鉄ビンをのせておく。 鉄ビンには鉄分がある。 沸騰し出すと、シュンシュンと湯気が上がる。 この湯気は、乾燥しすぎた部屋の空気をここちよく調整してくれる。 そして、そのお湯でお茶なんかを入れてすすれば、美味しいことうけあいなのだ。

アミをのせれば、餅だって焼ける。 餅は食べ頃になると「食べてもいいよォー」という合図にプーッと白い風船をふくらまして教えてくれる。 私は、しょうゆをつけて、のりを巻いてアッチッチ、アッチッチと食べるのが好きだ。 こんなことで、なぜか大人でも無邪気になってしまう。 子供達もファミコンなんかそっちのけで、火鉢の周りで大喜びしてはしゃぐのだ。

やきいもは、アルミホイルに包んで焼く。 火の近くのアクにうめておけばいい。 遠くにうめてしまうと、いつまでたっても食べられない。 やきいもは食べ頃になると「焼けたよォー」という合図にうまそうな香りをふりまいて教えてくれる。 ホクホクアツアツで、絶妙なうま味になる。

しかしいくらうまいからといって、焼き芋を食べすぎると後々事件が発生する。 事件といってもそれほど危険なことではないから心配はないのだが、発生する音色と香りが問題になるのだ。 発生者は、自分はすっきりするからいいとしても、「ブッ」とか「プーッ」などの音がオシリのあたりから出してしまうと、おかしくもないのに指をさされて笑われてしまったり、せっかく一緒に焼き芋のイイ香りを楽しんでいた友人なんかが、急に離れていってしまうことがあるからだ。 もし、まちがって音が出てしまったら、知らん顔して誰かのせいにしたりしないで、正直にニッコリ笑って「ゴメン」と素直にあやまれる心が、みんなにゆるしてもらえる秘訣だ。

さて、炭の火が消えそうになったら、どうするか。 私の場合、火吹き竹でフーッとやる。 あまり強く吹くと、アクが舞い散ってしまうので、静かーに長ーく、ふーーーっと吹く。 知らないうちに深呼吸の練習にもなる。

また話が横道にそれてしまうが、呼吸にはガス交換の他に「からだの余分な熱を捨てる」という大切な働きがある。 ちょっと試しに手のひらにハーッと息をかけてみよう。 熱いのがわかる。 熱が出ている証拠だ。

人間は、汗やおしっこ、そして、多くは呼気で熱を捨てることで一定の体温を維持するようにできている。となると、浅い呼吸で生きていると、そのイラナイ熱エネルギーが身体のいろいろなところに溜まって火事(炎)になり、病名「○○炎」などといったことになる。 だから、寝る前に床の中で腹式深呼吸を10回したり、カラオケで歌ったり、笑ったり、お経を唱えたり、とにかく、なんでもいいから、なんらかの形で気持ちよく息を呼いて余分な熱を捨てることが、からだの中を涼しく元気にする近道なのだ。

ことわざに「長く息を呼くと長生きになる」なんていうの、なかったかなぁ。 でも、深呼吸がからだにイイとわかっていても、なかなか続かなかったり、カラオケが嫌いだったり、おもしろくもないのにひとりでゲラゲラ笑ってもいられない。 といった人には、この「火吹き」がおすすめなのだ。

話が元にもどり、「フーーーーッ」とやさしく吹きながら炭を見つめていると、赤くてちぃっちゃかった火が、「風を送ってくれて、ありがとう」といいながら、(火が話すわけではないのだが、なんとなくそういっているみたいに見えてしまうだけ)じわじわとしみわたるように広がって、赤々と燃えはじめる。 そんな炭火に手をかざすと、やさしく温かいエネルギーがからだはもちろんだが、なんとなく心までも温かく癒してくれる。 炭火の真っ赤な光とやわらかい暖かさの波。 それらは、火鉢の空間をありがとうの波動で透かしてゆく。 そこにはなぜか、平凡ではあるが、やすらかでおだやかな感謝と調和の火のドラマが演出される。

ウソかホントかためしてみるしかない。                                 


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Last-modified: 2011-12-01 (木) 22:25:53 (1945d)