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河北町勉強会 2002.06.06  今昭宏

おととい、出稼ぎに行きました。役場主催の操体の講習会です。
じいちゃんばあちゃんが30人ほど集まっていました。
最初は、操体などといっても、「どうせ変な体操みたいなこと
でもするんだべぇ」くらいにしか思っていないようで、一番後
ろのばあちゃんなんか、膝が曲がらないらしく、ドデーッと足
を投げ出して夕飯のみそ汁のことでも考えているみたいな顔し
てぼけーっと外を眺めて遊んでいる様子でした。

私は、密かにこのばあちゃんを後でエジキにしょうと心に決め、
へらへらと話をはじめました。
「みなさん、あちこち痛くなったとき、どうしてますかぁ?」
などと質問形式でスタートです。
「おらぁ病院さいぐ、シップはる、薬飲む、・・・・・」と、
いろいろ教えてくれます。
大体出そろった頃合いを見て「足痛いときに、手動かすと治るっ
て知ってましたぁ!」と私。

「なんだとぉ!!!」とは言わないけど、興味しんしんみんなの目
の色が急に輝きだしました。
「右の肩痛い人は、左の肩動かせば治るし、腰の痛い人は足動か
せば治るんですよォ」と私は少し笑って平然と言います。
そんな話を耳にしたみそ汁ばあちゃんは、外眺めをやめて、
「なになに」てなヤジウマ顔になってこっちを向きました。


病院へ行って、注射もしたし薬も飲んだし、いろいろやって、
それでも治らない膝なのに、手を動かせば治るときたもんだから、
信じられない反面、おもしろそうだと思ったのでしょう。

一番前のおじいちゃんなんか、食い入るようにわくわく私
を見ていました。
このじいちゃんは、農家で働き者らしく、腰が痛くてきていたの
でした。じいちゃんの登場は少し後になります。

「ここの真ん中を開けてまーるくなってください」私はみそ汁ば
あちゃんの操法の準備に取りかかりました。
私は「だれでもいいですからモデルになってもらえませんかぁ、
どっか痛い人のほうがいいかなぁ」とみんなを見回したふりをして、
計画どうりみそ汁ばあちゃんを指さしました。

「おかあさん、膝痛そうですねぇ、ちょっとこっちに来てやってみ
ませんか」とにっこりやさしく誘う私。
このとき、「ばあちゃんでてきてぇ」などと本気で思っていることを
言うと、ほとんど尻込みして出てきてくれませんから注意がいります。

操体の指導には高度な心理学が要求されるのです。
予定どうり、ばあちゃんがびっこを引いてよろよろニコニコ歩いて出
てきてくれました。
「こっちの膝がいでんでがすぅ」と笑顔で左びざをさすって教えて
くれました。
みんなが見ているので、ちよっと緊張して、膝痛いくせに照れ笑いの
ばあちゃん。「仰向けになれるかなぁ、ここにちょっと寝てみてぇ」
と私。
「だいじょうぶでがすっ」と丸太をひっくりがえしたようにゴロリと
寝るばあちゃん。

私は、いつもの膝ウラをクグッと探りました。
「これが痛くなってるなぁ」左ではなく、右の膝ウラ激痛でした。
ばあちゃんは、ビグビグッと動き、目を白黒させてびっくりし、
「いでぇなーっ」と顔を上げて私をみました。「右の手をバンザイし
てみてぇ、はい、今度は左バンザイしてぇ」とためしてもらいながら、
膝ウラのこりの消え具合を確かめます。
「右手の方が上げやすかったでしょう」私は見た感じと、こりの消え
方で、ばあちゃんが答える前に言い当てました。

「もう一回右手をあげてみてぇ」といいながら、膝裏のコリを探り、
「ほら、そうやって右手を挙げていると、ここのコリ痛くないでしょ
う」とコリコリ膝ウラを押す私。

ばあちゃんは、手を挙げたままビックリ顔でキョロキョロしています。
「その手を気持ちいいなあーって思うように上げてー」。気持ちよさそう
に上手に動くばあちゃん。「もういいなぁ、と思ったら力を抜いてェ」。
ゆっくりと手をもとにもどしていい顔のばあちゃん。

二回の右手バンザイでした。これで膝ウラのコリは消えました。
「立って歩いてみてぇ」と私。見ている人たちは、なにがなんだかわ
かんないといった顔ばかりでした。ばあちゃんはトコトコ軽快に歩いて
います。「正座してみてぇ」と私。「よっこらせっ」と正座してしまった。
少しは痛いようでしたが、久しぶりに正座ができたと喜んでいました。



会場のみんなは、すたすた歩いて座れるようになったみそ汁
ばあちゃんを目の当たりにしてどよめき、「ホォーッ」とか
歓声を上げて拍手する友達ばあちゃんまで出てきてしまいました。

私はびっくりしながらもばあちゃんに、こんな質問をしました。
「おかあさん、だいぶ良くなったみたいなんだけど、これ治し
たのはだれなのかなぁ」。

「せんせですぅ」と私のせいにするばあちゃん。

「ちがうでしょう、おかあさんが自分で気持ちよく手を挙げた
から良くなったんでしょう」と私は少し怒って笑い「みんなも
そうだけど、病院に行かなければならないときもありますが、
今みたいに自分で動きやすいところを気持ちのいいように動か
すと、こうなってつながってますから、関係のないようなとこ
ろが治ってしまったりもするんですね」

「痛いところじゃないところからはじめた方が治りやすいんです」。
「からだって、けっこう自分でも直せるものなんですね」。
おもしろびっくりのばあちゃんの姿を見せられた直後のせいか、
私の言葉がみんなの心にしみこんでゆくような感じがしました。


「次に誰か腰とか痛い人いないですかー」とさっきの働き者の
ちっちゃいじいちゃんと目が合う私。
「やってみますか」。「はい」。てなことで、ノリのいい腰痛の
じいちゃんがホイホイ出てきてくれました。仰向けになって、
膝倒し操法からはじめました。「右に倒すのとぉ、左にたおす
のとぉ」と私はじいちゃんの膝を少し押し倒して手伝いました。

左の方へはすんなりとやわらかく動くのに、右には中央から
硬くて全然動けなかったのです。右に倒そうとすると、上体も
一緒に動いて寝返りするようにしか動けないのでした。
「左に膝を倒してみてください」と私は右手で膝のウラに中指を
フィットさせ肘を締めて、じいさんの膝をヘソに引き込むような
感じで抵抗をかけました。

「痛くないようにぃ、気持ちのいいように動いてぇ、大丈夫です
かぁ、抜きたくなったら力を抜いていいですよぉ」とへらへら私。
じいちゃんは、左に寝返りするように動いて、ゆっくりともとに
もどった。「どうでした、気持ちよく動けましたか」と私。
おかしくもないのに首をかしげて笑うじいちゃん。

膝を倒してテストしてみたのですがさっきと変わらず硬くて
動きません。「これはあまり気持ちよくなかったみたいだねぇ、
じゃあ、別の動きをやってみましょう」と私はカカト踏み込み
操法をすることに決めました。


「片方ずつ、ひざを胸につけるように上げてみましょう」と
私も膝のところをもって軽く胸の方に押しつけてみました。
右が硬い。「こう曲げられて、どっちがつらい感じかなぁ」
「こっちがつらいでがす」とじいちゃんはやっぱり右の尻のあたり
を押さえました。「どうしたらいいのかなぁ」と私はじいちゃんに
質問しました。じいちゃんは、わからないらしく、顔を赤くして、
また首をかしげて笑ってごまかしました。

「左の足あげるんでねぇのがぁ」見ていたおっきいじいちゃんと、
反対側でみていたおばさんが、一緒に教えてくれました。
みそ汁ばあちゃんもうなづいていました。

「はい、それじゃあやってみましょうね、左の膝をすぅーっと
上げてぇ、そうそう、そうやって上げると、こっちの右足は自然に
床を踏むようになるでしょう、こっちの踏む方をカカトで気持ち
よーく踏み込んでみてぇ」。スムースに動くちっちゃいじいちゃん。
「もういいなぁと思ったら気持ちよく力を抜いてよぉー」
少しがんばりぎみのようでしたが、はじめてのことなので、
許すことにしました。じいちゃんは、ゆっくりと力を抜き、
イイ顔でみんなを見回しました。

「もう一回やってみたいかなぁ」。「はい」。
「とにかく、自分で気持ちのいいようにこっち踏んで、
こっち引いてぇ」と私はじいちゃんの右膝の下をすくい上げる
ように持ち、浮いている左ひざは軽く押さえておきました。
「腰も背中も気持ちよくなるようにぃ、抜きたくなったら好き
なように抜いていいですよぉ、腰からフッと抜いてみようか」と
私は期待しないでそう言いました。

じいちゃんのからだが、フッと瞬間的に力が抜けました。
私は「うまいっ!」と言ってしまいました。
そして、ここで普通なら足が上げやすくなったかどうかを確認する
ことになるのですが、私はなぜかそれをしないで、
最初の膝倒しをテストしたのでした。

あれだけ固まっていた腰がストンとやわらかくなったようで、
すいすい膝が倒れるようになりました。
じいちゃんは、びっくりニコニコ起きあがり、うろちょろ歩き回って
言いました「なおった!」と。

周りで見ていた人たちも、じいちゃんの笑顔が伝染したのとビックリ
したのとで、みんないい笑顔になって、私もうれしい気持ちになりました。


みんなで喜んでいると、太ったおばちゃんが質問です。
「せんせぇ、私は右手のこの指がまがんなぐなったんだげんともぉ」と
笑ってグーパーして見せてくれました。薬指と小指がしっかりと握れな
くて、グーが出せずにいました。私はその手を見ながら「そうやって
握るとつらいんだよねぇ、じゃあどうしたら治るかなぁ」と逆におば
ちゃんに聞きました。向かい側にいたオッキイじいちゃんが、
「ひらげばいいんでねえのがァ」と教えてくれました。

おばちゃんはそれでもなぜか考えている様子でした。
痛い動きの反対に気持ちよく動かせば早く治るぅ。そんなことで
ホントに治るのかねぇ。と目の前で良くなる姿を見せられても
信じ切れずにいるようでした。

「今まで一生懸命に手を握る練習してたでしょう」と私。
「ハイッその通りです」とは言わなかったのですが、おばちゃん
の顔は「バレタカァ」と答えていました。

「こうやって、パーを出すようにパーっと手を開いてみてぇ」と私。
まねして開くおばちゃん。「そうそう、気持ちのいいようにィ、・・
・それでぇ、フッと抜いてぇ、・・・・ハイもう一回パーっと開いてぇ、
・・・フッと抜いてぇ、どうですか、痛くないですよねぇ、
けっこう気持ちがイイでしょう。もう一回やってみようかぁ、
練習だからやってみよう、そうそう、肩とか背中の方まで気持ちイイ
なーってなるようにぃ」と私。こうしておばちゃんは三回のパーだし
背伸びをしました。

そうしたら、これだけのことで手がしっかり握れるようになり、
なんなくグーが出せるようになりました。
おばちゃんは、握った手を不思議そうに見ながら、まだどこか疑って
いるような顔で首をかしげ、グーパーグーパーを繰り返していました。
おばちゃんは、きっと今まで自分が「イイコト」と信じてきた価値観
が一瞬にして崩れてしまうことがクヤシかったのでしょう。

私はそんなおばちゃんの姿を見て、「何かにつまづいて転んでみたり、
遠回りをして失敗してみたりと、無駄なことをたくさんやってるみたい
に見えるけど、それでいいんだよォ。いろいろ味わって、まずは何かに
気づければエライもんだよ」と心の中でつぶやきました。
私が自分に送ったメッセージだったのかも知れません。


さっきまで、私の質問をすべてクリアーしたおっきいおじちゃんの番が
来ました。おじちゃんは何年か前に脳出血を起こして少し右片マヒがあ
って、足に痛みとかはないらしいのですが、右腕全体がシビレて眠れな
いらしく、寝る前に安定剤をのんでいるということでした。
それに、右手がカクカクぷるぷると忙しくふるえていました。
ちょっと不自由そうですが、グーパーもバンザイも出来ました。

アオムケに寝てもらい、いつもの膝ウラを探りました。
左側にでっかいゴリゴリがあり、グッと押さえたら、イタッとなりました。
となる予定だったのですが、これがイタクナイ、ニゲナイのです。
これだけ凝っているのに、「なんだこの膝は?」と思いました。
ときどき、こういう人に出くわします。たぶん、感覚がニブクなっている
のでしょう。こういう人は、押さえているうちに、だんだん感覚がよみが
えってくるタイプです。

コリッ、コリコリッ、コリッと押さえていると、やっぱりきました。
みそ汁ばあちゃんがきたのではありません。痛みがきたのです。
「あららっ、イデッ、、、イデデデッ、だんだんイデグなってきたー」と
おじちゃんは顔をクチャクチャにしてビックリです。

私はこの時、なぜか後でオデコのカワの操体をしようと決心しました。
そしてまずはイイ方の足の操法からはじめました。「この足こうやってあげ
るのとぉ、カカトで床を踏むのとではどっちがやりやすいかなぁ」と私。
少し考えて「踏む方がイイかなぁ」と、おじちゃん。
「それじゃあこのカカトを気持ちのいいように踏んでぇ、足の先をちょっと
上げてみようかぁ、腰も背中もイイ感じになるようにぃ」と私は右手で膝ウラ
のコリが消えるのを確かめながら、左手で足の甲に抵抗をかけ、目はおじちゃ
んの全体をなんとなく眺めています。「もういいなぁ、と思ったらストンと力
を抜いてよぉ」と瞬間脱力に挑戦してもらう私。

おじちゃんは「ガグ、ガググー、ーーッ」と脱力しました。
私は「ヘッターッ」と思ったけども「うまいねぇ!」とホメました。
おじちゃんはウソとも知らずにその気になって、みんなにウレシイ顔を
見せました。左にいた腰の曲がったバアチャンも知らずに拍手をしました。
これで、膝ウラのコリがほぼ消えてしまいました。

動きと脱力で消えたのか、ほめられてうれしくて消えたのかは、わかりま
せんでした。
私は、予定通りおじちゃんの頭の方にきて、オデコのカワを動かしてみるこ
とにしました。髪の生え際に両手の2、3、4指の指腹を軽く当てて、
スムースに動く方向を探してみました。頭のてっぺんの方には、固くて
まったく動きませんでした。
反対に顔の方向には「ふにょーっ」とすんなり動きました。

どっちが気持ちがいいのか、きいてみると、やっぱり顔の方に動かされるの
がイイとのことでした。私は生え際のカワを少し眉毛の方に押し下げながら
「どんな感じで気持ちがいいですかぁ」とタコみたいに変身したおじちゃん
の顔にききました。「目の奥がジーーンとしてきて、涙がジワーッとででく
るみだいだぁ」とタコおじちゃんが目をつむっていいました。

目の奥が気持ちよかったというので「はい、今度は自分でもやってみてぇ、
頭の中がすーっと気持ちのよくなるようにぃ」と私はいいました。
おじちゃんは、オデコのカワをあちこちに動かして「へえーっ、こっちど
こっちではちがうもんだなぁ」と驚いているようでした。

「家でも遊びながらでいいから気持ちのよくなるようにためしてみたらい
いさ、ねぇ」と私はいいました。
立って歩いておじちゃんは、足が軽い感じになったといいました。でも手の
しびれまでは治りませんでした。

歩きながら、おじちゃんのしびれた手がかくかくと揺れ動いていました。
おじちゃんは、その動く手をさも憎らしげに左手で押さえて止めようとしました。
私は「その手がゆれるのは、それでバランスをとっているんだから、止め
ないで、どんどん気持ちのいいようにふるわしてあげたらいいよぉ」と
ホントのことをいいました。

みていたまわりの人たちも、「へぇーっ」とびっくりして、みんな自分の
オデコを押さえたり、手をぶらぶらしたりして「上だー、下だー」とやりました。
そばでみていた町の保健婦さんがおもしろがってメモしていました。
私は、メモなんかしてないで、一緒にためしてみればいいのになぁと思いました。
その後、ひとりひとりが思い思いの格好で、ひっくりがえって、見て覚えた
操法をワイワイ練習して、終わりとなりました。
宮城県河北町での操体勉強会のひとこまでした。

完。

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